オフィスビルの原状回復義務

特定非営利活動法人土地・建物・まちづくり相談センター

■不動産豆知識
オフィスビルの原状回復義務
オフィスビルは特約条項が生きてくる
2004/06/10
宮本靖夫
新築のオフィスビルの賃貸借契約の終了に伴い、賃借人が住居の賃貸借と同様に通常の使用にによる自然損耗であるから、保証金は全額返還せよとの主張に対し、裁判では賃貸借契約に、賃借人は賃借当時の状態にまで原状回復して返還せよとの約定がある場合は、これに従うべきとの判決がでました。
最近、賃貸住宅の契約終了に伴い賃借人から敷金返還の相談が頻繁に寄せられております。これは契約書で謳っている「原状回復義務」をはさんで、貸主と借主との解釈の相違と国土交通省からだされたガイドラインによっているものと思われます。
住宅については、徐々に家主、借主にも《通常の使用による汚れ、損耗は家主の負担とする》という考え方が浸透しつつあります。
さて、本題は住宅以外の事務所、店舗などについての原状回復に関することです。結論は前文の通りでありますが、もう少し詳しく話しますとつぎのようになります。
本事件の判決は第1審の東京地裁では借主有利の判決が出、高等裁判所では、次の通り判断しました。
(1)本件賃貸借契約における原状回復条項は、
「本契約が終了するときは、賃借人は貸借期間終了までに造作その他を本契約締結時の原状に回復しなければならない。」「本条に定める原状回復のための費用の支払は保証金償却とは別途の負担とする。」等と記載されており、造作等について「現状を変更する場合は賃借人の負担によりおこなうものとする。」と定められている。これら原状回復条項の文言自体および造作等に関する特約の内容に照らして、賃借人に対して本件建物を賃借した時点における原状に回復する義務を課したものと解するのが相当である。
(2)賃借人の入居期間は賃貸人に予測することは困難であるため、適正な
原状回復費用をあらかじめ賃料に含めて徴収することは現実的に不可能であり、賃借人が退去する際に賃借時と同等の状態まで原状回復させる義務を負わせる旨の特約をさだめることは、経済的にも合理性があると考えられる。
(3)「賃貸住宅標準契約書」は、賃借人は、通常の使用にともない生じた損耗を除き原状回復しなければならない旨きていしているが、右は市場性原理と経済合理性の支配するオフィスビルの賃貸借に妥当するとは考えられない。(借主)らは、本件原状回復条項に基づき、通常の使用による損耗、汚損をも除去し、賃借当時の状態に原状回復して返還する義務があるというべきである。

営業用建物賃貸借の保証金清算に関して参考になる事例と思われます。
 
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